国立岐阜大学 纐纈博士よりシアル酸について

私が1990年シアル酸の研究を始めてすでに26年以上の月日が流れました。その間、シアル酸に関して多くの研究が報告され様々な重要な発見がなされてきました。

シアル酸は、N-アセチルノイラミン酸(図1)を代表とする酸性糖で我々動物の細胞表面の糖脂質や糖たんぱく質の末端に存在し細胞同士が最初に接触するいわゆる細胞伝達機能やウイルスや毒素など外界からやってきたものを最初に認識する重要な我々の細胞の構成成分(図2)のひとつです。

図1:N-アセチルノイラミン酸


図2:細胞表面の末端に存在するシアル酸とウイルスなどとの相互作用

シアル酸は、動物細胞及び一部の微生物から発見されており植物細胞に存在するという報告例はありません。シアル酸は、細胞伝達機能、免疫、がん転移、炎症抑制、ウイルスや毒素の中和作用(1)などいろいろな体にいい作用(図2)が報告されています。

これまでそのシアル酸を鶏卵や牛乳や大腸菌などから製造する方法が報告されていますが、いずれの原料もシアル酸含量が低く工業的応用が困難なものでした。燕の巣は中華料理の高級食材として古来より用いられており、長い食経験があり安全性の高い素材です。粘性の高いシアル酸を主要な構成成分とするムチン質から構成されていてふかひれ同様粘性がありツバメの巣のスープは高級料理として広く知れ渡っており、滋養強壮、美容効果も期待され貴重な食材として扱われています。

我々の研究室での分析結果からこの燕の巣には高含量のシアル酸が含まれておりシアル酸の供給源として最善のものであることを確認しました。長い食経験を有し高含量にシアル酸を有する燕の巣からシアル酸を調製することは安全性の確保と高含有・高純度のシアル酸を製造する最適な原料です。今回、長年のシアル酸研究のノウハウを活用し我々の研究室で調製法の検討を行ったところ工業スケールで製造できる方法を確立することができました。

燕の巣には、インフルエンザウイルス感染阻害作用(2)、抗炎症作用(3)、骨粗しょう症、皮膚老化抑制作用(4)など様々な作用が報告されています。これらの機能の多くは燕の巣に高含量含まれるシアル酸の役割です。燕の巣由来のシアル酸が食品や健康素材として工業的に活用できることは人々の健康の維持増進に大きな役割を担うことでしょう。


G-Foodsタマ・ツバメの巣エキスパウダーの機能性
● 機能性1
● 皮膚細胞増殖作用1(In vitro) ● 皮膚細胞増殖作用2(In vitro)
ケラチノサイトに対する細胞増殖作用が見られた 繊維芽細胞に対する細胞増殖作用が見られた
● 機能性2
皮膚水分蒸散量の変化 皮膚弾力の変化
● 機能性3
弊社のツバメの巣エキスには他社製品に比べ、約5倍のEGF濃度を含有!!



参考文献:
(1) Howe, C., Lee, L. T., Rose, H. M., Influenza virus sialdase. Nature, 1960, 188, 251-252.
(2) Guo, C. T.; Takahashi, T.; Bukawa, W.; Takahashi, N.; Yagi, H.; Kato, K.; Hidari, K. I.; Miyamoto, D.; Suzuki, T.; Suzuki, Y., Edible bird's nest (EBN) is the nest made from the saliva of Collocalia swift. Antiviral Research, 2006, 70, 140-146
(3) Aswir, A. R.; Wan Nazaimoon, W. M., Effect of edible bird's nest on cell proliferation and tumor necrosis factor-α (TNF-α) release in vitro. International Food Research Journal, 2011, 18, 1123-1127.
(4) Matsukawa, N., Matsumoto, M., Bukawa, W., Chuji, H., Nakayama, K., Hara, H., Tsukahara, T., Improvement of bone strength and dermal thickness due to dietary edible bird’s nest extract in ovariectomized rats. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 2011, 75, 590-592.

略歴・受賞歴等:

博士(学術) 纐纈 守
平成21年4月 岐阜大学教授 工学部
平成25年4月 岐阜大学 工学部
化学・生命工学科学科長、機能材料工学科学科長
平成26年度 グローバル化推進室 室長
平成26-27年度 岐阜大学 工学部 副学部長(教務担当)、教務委員長
  現在に至る
  この間
  平成 11年5月~平成 12年 9月
米国アイオワ州立大学 アイオワ大学客員助教
The University of Iowa, Visiting Assistant Professor
加入学協会名:日本栄養・食糧学会、日本化学会、有機合成化学協会、日本油化学会、全米化学会
平成16年9月~平成20年2月 有機合成化学協会東海支部常任幹事
平成19年3月1日~現在 日本油化学会東海支部常任幹事
平成21年4月~平成27年3月 日本油化学会代議員
平成22年3月1日~平成24年2月29日 日本化学会東海支部常任幹事

備 考:
平成 6年5月 (財)大阪工研協会工業技術賞
平成13年7月 (社)有機合成化学協会東海支部奨励賞
平成26-28年度 岐阜県高等学校総合文化祭自然科学系部活動研究発表・交流会 講師・審査員
平成27年8月~平成30年3月 留学生交流事業実施委員会委員(独立行政法人日本学生支援機構、JASSO)
平成27年度~平成32年度 国立大学法人岐阜大学シニア教授 (Senior Professor)の称号付与